29日に、熱海MOA美術館能楽堂にて開催されました
開館40周年記念 「人間国宝スペシャルトーク」へ行ってまいりました。
ご出演は、坂東玉三郎さんと、竹工芸作家の藤沼昇さん、
漆芸家の室瀬和美さん、染織家の土屋順紀さん。
能楽堂の中に入ると、舞台上に、椅子が4つ、並べられていました。
あ、今日は、皆さんでの対談で、司会の方はいらっしゃらないのだな、と..。
ところがところが
最初にMOA美術館の館長の内田 篤呉さんがご挨拶されて
その中で、「この記念のイベントは、玉三郎さんから
「開館40周年ですから何かやりませんか」とご提案いただき
そのおかげで、こうして、トークショーを開催することができました。
本当に感謝しております。そして、今日は、玉三郎さんに
司会進行をご担当いただきます」とおっしゃったのです。
えええ!私は、びっくりするやら、うれしいやら。
司会進行も、人間国宝の玉三郎さん。
なんと贅沢なトークショーでしょうか。
そして、いよいよ、橋掛かりから、4名様がご登場。
右から、玉三郎さん、藤沼さん、室瀬さん、土屋さんの順で
着席されました。皆さん、和装です。
玉三郎さんは、茶系と鼠系の濃淡の羽織袴をお召しでした。
玉三郎さんが、まず
「私は、舞台に立つ人間ですので、司会進行をやらせていただきます。
私がこちらの能楽堂で公演を始めてから約30年になります」とご挨拶されました。
一昨日まで、るんと姐さんだった玉三郎さんは、
涼しいお顔で、おだやかな微笑を浮かべながら、お話されていました。
私は、玉三郎さん以外のお三方を存じ上げなかったので
もしかすると、ザ・重鎮!って感じの方々で重厚なお話になるのかな…
もしくは、ザ・職人気質!の方々で、寡黙で静かな感じなのかな…
と勝手に想像していたのですが、玉三郎さんが江戸弁で
「あのさ、それって、先生が削るの?」とか、
「わからないんだけどさ、どれくらい時間がかかるの?」とか、実に
ざっくばらんな感じで、率直に、みんなの聞きたいことを聞いてくださるので
すごく場が和やかな空気になって、こちらの緊張も解けて、人間国宝の皆さんも
ユーモアを交えながら、人間味溢れるお話を聞かせてくださいました。
みなさんが、お答えになるたび、玉三郎さんが
うんうん(目をつぶって深くうなずく)、あ~はっは(上を向いて笑う)、
そうそう(相手の目をみてうなずく)、ふ~ん(初めて知った!まんまるの目)
あぁ~(口を大きく開いて納得する)、えっへっへ(恥ずかしそうに笑う)などなど
終始、真剣に、軽やかに、優しく、あいづちを打っていらっしゃいました。
話題は、多岐にわたり、
●
この道に入ったきっかけは?(皆さんそれぞれのご経験と思いをお話しくださいました)
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竹、漆、植物などの自然素材で工芸品を作ることの難しさについて (漆はひと塗りが0.02ミリなので、2ミリにするためには
100回塗り重ねる、染織は、植物の色を掛け合わせて
ひとつの色を作るが緑色が一番難しい。玉三郎さんが、
自然の草花の緑はあんなに多彩なのに不思議ね、と。
玉三郎さんが、白い甕を覗いたときに見える「甕のぞき」という色について
浅葱でも青でもない色、と )
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自然環境の悪化によって自然素材にも影響が甚大であること (酸性雨によって竹が昔のような柔らかさではなくなっている)
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道具の作り手の方がいなくなっている (蒔絵の筆を作る人は、京都にたった一人だけ、
その原料になっている鼠の毛も取れなくなっている。玉三郎さんが所持して
いる松園さんの絵画の顔の線もその毛のようなとて繊細な描写であること)
●
工芸品を日常的に使ってもらうことが日本文化を継承する上で
とても大事なこと。 (着物を着たり、漆の器を日常的に手にして欲しい。漆はデリケートだと
思われがちだが硫酸をかけても大丈夫。昔から漆のお重に入れる習慣は
食べ物が腐りにくいから。漆器を使うことで、上手なメンテナンスを覚える。
使わないとメンテナンスも覚えない。着物も一緒。日常で使うことにより
心豊かな暮らしができる。漆の花器に生けたお花は長持ちすることを
藤沼先生は体験して知った。先人の知恵を生活の中で生かすことが
伝統であること。)
●
芸を伝えることが難しい時代になっている (歌舞伎の世界では、昔は、通りすがりに先輩方が、声をかけてくれて
もっと良くなるように、伝えるということを意識することなく
いろいろと教えてくれた。玉三郎さんが、勘彌さんの口調で、
「俺は、女形のことは教えられないよ。でも俺のかゆいところに
手が届くようじゃないと女形になれないよ」とか「スッと飲み干した時に
スッとお酌がくるようじゃなきゃいけねえ」と、おっしゃって
「俺」とか、「いけねえ」、という玉三郎さんの口から出る言葉に
ドキッと。花柳章太郎先生のお弟子さんにもいろんなことを
教えていただいたそうです。「日本橋」のお孝さんの一石橋での
衣裳を取り上げて、舞台で映える衣裳について)
●
技術を伝えたり、教わることも大事だが、先生の考え方や、ものを作る心を
先生と共に過ごすことで、教わることが大事。人に会って、ふれあわなければ
伝わらないことがある。(門で見送る心について。玉三郎さんが、
京都の画家の先生のお家を訪れた時の思い出について)
このほかにも書ききれないほど、
皆さんのご体験や思いをお聞かせくださいました。
人間国宝の皆さんに共通しているなぁと感じたのは、
道を究めるために何事も突き詰めて、精進を続けていらっしゃる方は
考え方がハッキリしているから、お話が、実に明快で
無駄なく、わかりやすく、スパッと心に届く、ということでした。
グイグイとお話にひきこまれていきました。
また、今に至るまでの道のりとして、
玉三郎さんが、この道を志したきっかけについて
深く、突っ込んで皆さんに聞いてくださったので
皆さんが、どんなことに触発されてこの道に入り、
またいろいろ悩んで、挫折して、でも、また奮起して、突き詰めて、
常に、自分の魂に向き合って、圧倒的な熱量をもって、鍛錬して
今に至っていらっしゃるかが、よく理解できました。
玉三郎さんがこの道に入ったきっかけについては、
もの心つかない頃から、音楽と色彩にひかれたから。
理由はない。音楽が揺らめいていた、と(美しい表現ですね)
今回、「人間国宝スペシャルトーク」というタイトルの
「人間国宝」という言葉をもっとかみ砕いて感じさせてくださり
生身の人間の、おひとりのおひとりの人生から、
その真の意味に触れさせていただく思いがいたしました。
学ぶことと、感じることがたくさんあって、実りの多い時間でした。
玉三郎さんとみなさまに、心から感謝申し上げます。
どうもありがとうございました。
橋掛かりには、土屋さんの「紋紗」が3点。
一点ずつ、あの青はインド藍、えんじゅの蕾から染めた黄色、
唐紅は、西洋茜とインド藍をかけた色、などご説明くださいました。
玉三郎さんが、「いつか私も着たいです」と。見たい!見たい!
話は変わりますが…
玉三郎さんのコメントがアップされましたね。
でもって、第27回宮崎国際音楽祭 シリーズ「Oh!My!クラシック」
ときめきは海を越えて ~人間国宝 玉三郎の音楽世界
の演奏家の方が発表になっていたのですが
なななんと!いつもおなじみの
ヴァイオリン:吉田篤貴、吉田篤
ヴィオラ:村松龍
チェロ:ロビン・デュプイ
ベース:西嶋徹
ピアノ:三枝伸太郎
とあります。
ってことは、もしや~♪♪
玉三郎さんの歌唱も、あるんですかね。
キャ~♪♪